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ニカが思ったことを、高田純次並にテキトーに垂れ流す場所。
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AM 11:24




「お姉さんどうしましたー?何かお困りですか?」
「………ボトヴィニク?よかった、ちょうどいいわ。」
「ヴェ……ヴェヴェヴェヴェロニカちゃん?!ちょ!何でこんなところに?!」
「うるさい、黙って。」
「だって、ちょ、え、っつーかまずいですって!」

ボトヴィニクと呼ばれた青年はヴェロニカをずるずると路地裏まで引っ張った。

「なんでロシアに戻ってきたの…ここにどれだけ政府の人間が
 いるか分かってるよね?見つかったら殺されるよ?!」
「だって他にツテがなかったから仕方ないでしょ。」
「ツテ、って?」

彼はセルゲイの後輩であり友人で、唯一『事情』を知っていた役人だった。
今ヴェロニカがロシアで頼れる人物は、彼のほかには居なかった。
だから危険を冒してでもここに来るほか無かった。
目的を果たすためには。

「教えて、セルゲイは、どこ?」

唐突な問いにボトヴィニクはぐっと息を詰まらせる。
そしてゆっくりなだめるように話し始めた。

「サヴィツカヤ先輩は……亡くなりました。」




どこかで期待していた。
本当はやっぱりどこかで生きているんじゃないかって。
淡い淡い、期待を…。

「分かった。ねぇ、お墓くらいあるんでしょ?」
「うん…地図書くよ、待ってて。」
「マザーたちの、は?」
「…ない、…ごめん。」

そう、とだけ短く答えたその表情は変わらず。
地図を受け取り礼を言うと、ヴェロニカは背を向け歩き出した。

「ヴェロニカちゃん、これからどうすんの?」
「…もうロシアに、ニカの居場所なんでないわ。」

政府の人間に見つかれば命の危険にさらされる。
分かっていてもどうしても、ケリをつけなければならなかった。
全てが始まり、全てが終ったこの故郷で…。

「あのさ!先輩、本気でヴェロニカちゃんのこと好きだったよ。」

ぴたり、足が止まる。
ロシアの冷たい風が、頬を撫で通り過ぎた。



「知ってるわ、そんなこと。」

ゆっくりと振り返ったヴェロニカの顔には――。
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ヴェロニカ・セヴァスチヤノフ
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