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ニカが思ったことを、高田純次並にテキトーに垂れ流す場所。
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「……なぁ、ニカ。」

「なに?」

「イタリアとドイツと日本、どれがいい?」

「…なんの話なの。」

「2人でさ、逃げようかなーと思って。」

「……。」

「ロシアを出て、どっか田舎の方で静かに、のんびり暮らせば、そしたら。」

「…そしたら?」

「お前のこと、失わずに済む。」

「……寝た方がいいわセルゲイ、まだ熱がある。」

「ヴェロニカ。」

「ね?寝ましょう…目、閉じて。」

「…お前のそういう、大人なとこ、嫌いだ。」

「そう、ごめんね。」


そうできたら、どんなに幸せかって思うけど
もう、叶わない夢を見るのは、約束をするのは
哀しいから、嫌だったの。
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「セルゲイって、本名?」

「そうだけど、なんで?」

「偽名かなって思って。」

「いやいやいや、偽る理由が無いだろ。」

「ニカという敵を、欺くために…。」

「ほんっっと信用ねぇのな!俺!」

「信用っていうか、組織のメンバーみんな偽名だし。」

「え…あれ、ヴェロニカ、も?」

「マザーがつけた偽名よ。」

「あ、ごめん、普通にショックうけた…マジか…。」

「知りたい?ほんとの名前。」

「すげえ、知りたい。」

「マザーしかしらないんだから、ほんとにヒミツよ?約束できる?」

「神に誓って。」

「そんなクソッタレに誓われても…。」

「やめてくださいシスターヴェロニカ、教会でそんな事いうのは。」

「ふふ、セルゲイ、耳かして。」


長い間、自分でも思い出すことがなかった
パパとママから貰った大事な名前をそっと呟いた。
唇が少しピアスに触れて、くすぐったかった。

セルゲイは、いい名前だなって、褒めてくれて
ニカの心は、幸せだったの。
「セルゲイ。」

「おう、いらっしゃい。どうし…」

「ん。」

「…ん?」

「んっ。」

「え、なにごめん政府の機密情報なら持ってないけど。」

「そんなのいらないから。だっこ。」

「だっ?! デレきたーーー?!」

「イヤなの?」

「滅相もない、Да, мэм!」
「セルゲイって昔からロリコンだったの?」

「ぶっ!んなわけねぇだろ!つか今もロリコンじゃないから!」

「疑惑が晴れない。」

「いやいやいやマジで、むしろ年上と付き合ってた方が多いから俺。」

「…………へぇ。」

「…あれ、もしかして妬いてる?ニカが、俺に?」

「ありえないわ。」

「えーでも眉間にしわ寄ってるしなーあー可愛いなーニカは。」

「セルゲイ、黙って、死にたいの?」





死んでもいいよって、いつもより少し低い声で、耳元に囁かれたとき
ちょっと心臓が跳ねた。
だけど本当に死ぬことは、ないと思うの。
セルゲイはやっぱりバカだし、ロリコンだわ。
過去、修道院内にて録音された音声。
じっちゃんに言われて、はじめて気が付いた。

ニカ、右耳をさわるクセが、あるみたい。


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「きれい、それ。」

「何?ああ、ピアスか?」

「そう。シルバー?」

「いんやプラチナ、知り合いにオーダーメイドで作ってもらったんだ。」

「ニカも、ほしい。」

「ハタチになったらプラチナのエンゲージリング買ってやるよ。」

「セルゲイ、そのとき、アナタいくつ。」

「…………41……。」

「………。」

「やめろ!俺をそんな目でみるなー!」


そのあと、ピアスを片方、もらった。
それからずっと、右耳にいる。
「ねこ、どうしたの。」

「迷子みたいだよ、可愛いだろ?」

「かわいい、かわいい、とても。」

「もし飼い主が見つからなかったらさ、教会で飼ってやってよ。」

「イヤ。」

「えっ、なにその即答。お前すきだろ?ネコ。」

「スキだからよ。教会が政府に襲撃されたらどうするの。」

「………。」

「冗談よ、黙らないで。」

「ニカの冗談は笑えないんだっつの…。」

「ここで飼ってあげればいいデショ。」

「無理だな、正体バレて組織に襲撃されたらどうすんだ。」

「…………………………。」

「あのー、黙るのやめてくれるかな、スゲェ恐い…。」



そう、あの猫も黒猫だった。
あのあと、ちゃんと飼い主が見つかって
セルゲイは子供みたいに、ずいぶん落ち込んでた。
あの時はその「サミシイ」が、ニカには分からなかったけど
今なら、分かるわ。
「くさい。」

「なっ!お、俺はまだ加齢臭など!!」

「タバコよ。」

「なんだ、吃驚させるなよハニー。」

「誰がハニーなの。」

「いやぁ、鼻がきくんだなニカは。」

「そうよ、だから狂犬って、呼ばれてるの。
一度嗅いだ匂いは、忘れないわ。特に、戦場では…。」

「…なんだ、最初から気付いてたってことか。」

「セルゲイが、政府のイヌさんだってこと?」

「そうだ。…なぁニカ、なんでマザーに報告しなかった?
俺を殺す事くらい、いつでも出来たはずだろう。」

「ほんとね。」


でもね、他の誰かに殺されるくらいなら
ニカがこの手を汚そうって、おもってた。

ずっと、おもってた。






セルゲイはとうとう、一度も言わなかった。

『全部』が、ウソだったって--。
「なぁニカ。」

「なに?」

「お前なんでマザーに【トーイ】って呼ばれてんの?」

「ニッポンの言葉で、甘いおくすりのことなんだって。
 トウイジョウ、って言ってた。」

「へぇ、でもなんで薬。」

「表面は甘いけど、中身はすごく苦いの。」

「あ、あーなるほどな。そういうことか。」

「そんなに苦くないわ、ニカ。」

「よし、じゃあ俺が甘いかどうか試して…」

「おっさん、黙って。」

「ハイ。」
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ヴェロニカ・セヴァスチヤノフ
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