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ニカが思ったことを、高田純次並にテキトーに垂れ流す場所。
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ヴェロニカ・セヴァスチヤノフ (CV:若本規夫)


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ヒトのキモチほど、不可解なものは、ない。
ただいま日本、帰ってきた。

真っ先に、じっちゃん家にいった。
じっちゃんは、いつもと同じ様に「おかえり」をくれた。
てんちゃんは、いつもより多めに「おかえり」をくれた。
ちょっと「家族」みたい、すてきね。

数日ぶりの日本は、いいニオイ。
ロシアより、スキなニオイ。


学校は、ぴり辛なニオイ。
テストの結果、返ってきてた。
今回は一桁がなかった、やったわ。
千慶さんとイッショにお勉強(?)したお陰で、ニガテな
保健体育の点数があがったの、ありがとう。


葉さんのお助け依頼の方は…こっそり物陰から伺ってきたけど
なんだか、ややこしいニオイ。
ん……ニカはただ、見守るしか出来ないけど。

ともかくみんな、笑顔になれるケツマツに、なればいい(十字架へし折り)
ひっそりと静まり返った墓地に、彼は眠っていた。
身寄りのなかった彼ではあったが、その性格ゆえ
友人が多く、墓は綺麗に手入れが施されていた。

「ただいま、セルゲイ。」

花を置き、祈りを捧げる。
そしてヴェロニカはそこで、長い長い時間を過ごした。

「会えてよかった。あと…好きだったわ、ニカも。」

ゆっくり立ち上がるとスカートの汚れを払い
墓に刻まれたセルゲイの名を撫でた。

「さよなら、次はあの世で会いましょ。」




ヴェロニカは、もう二度と来ることはないその場をあとにした。
日本へ帰るために。


その背中に、もう迷いはなった。
その一言に、たった一言に

救われた気がした。
AM 11:24




「お姉さんどうしましたー?何かお困りですか?」
「………ボトヴィニク?よかった、ちょうどいいわ。」
「ヴェ……ヴェヴェヴェヴェロニカちゃん?!ちょ!何でこんなところに?!」
「うるさい、黙って。」
「だって、ちょ、え、っつーかまずいですって!」

ボトヴィニクと呼ばれた青年はヴェロニカをずるずると路地裏まで引っ張った。

「なんでロシアに戻ってきたの…ここにどれだけ政府の人間が
 いるか分かってるよね?見つかったら殺されるよ?!」
「だって他にツテがなかったから仕方ないでしょ。」
「ツテ、って?」

彼はセルゲイの後輩であり友人で、唯一『事情』を知っていた役人だった。
今ヴェロニカがロシアで頼れる人物は、彼のほかには居なかった。
だから危険を冒してでもここに来るほか無かった。
目的を果たすためには。

「教えて、セルゲイは、どこ?」

唐突な問いにボトヴィニクはぐっと息を詰まらせる。
そしてゆっくりなだめるように話し始めた。

「サヴィツカヤ先輩は……亡くなりました。」




どこかで期待していた。
本当はやっぱりどこかで生きているんじゃないかって。
淡い淡い、期待を…。

「分かった。ねぇ、お墓くらいあるんでしょ?」
「うん…地図書くよ、待ってて。」
「マザーたちの、は?」
「…ない、…ごめん。」

そう、とだけ短く答えたその表情は変わらず。
地図を受け取り礼を言うと、ヴェロニカは背を向け歩き出した。

「ヴェロニカちゃん、これからどうすんの?」
「…もうロシアに、ニカの居場所なんでないわ。」

政府の人間に見つかれば命の危険にさらされる。
分かっていてもどうしても、ケリをつけなければならなかった。
全てが始まり、全てが終ったこの故郷で…。

「あのさ!先輩、本気でヴェロニカちゃんのこと好きだったよ。」

ぴたり、足が止まる。
ロシアの冷たい風が、頬を撫で通り過ぎた。



「知ってるわ、そんなこと。」

ゆっくりと振り返ったヴェロニカの顔には――。
 ロシアに居た頃、組織に居た頃。
 思い上がっていたわけじゃないけど、ニカは強かった。
 「血に飢えた狂犬」なんて呼ばれて、恐れられてた。

 でもそれは、強かったわけじゃないって、分かった。
 ニカは言われた通りにしていただけ。

 捕らえろと言われれば捕らえ、殺せといわれれば殺した。
 誰が正しくて誰が間違ってるかなんて、何も分からなかった。
 何も考えたくなかった、考えられなかった。


 灼滅者としてのニカは、酷く無力だって分かった。
 周りの皆はどんどん強くなっていった。
 誰かを守りたいって言うキモチ、助けたいってキモチ。
 ニカが知らないキモチを、持っていたから――。

 感じない、哀しいってなに?憎いってなに?
 壊れたココロでは、誰も救えない。
 誰も愛せない。愛されない。
 役立たずの、ジャンク。



教室で見つけた、一・葉氏の救助依頼を空ろな眼で
見つめていたヴェロニカは、ぼそりと一言呟く。
 
「なんにも、見えない…。」







――1時間後


自宅裏に住む老人の元を訪れていたヴェロニカは
その腕に抱いた黒猫を託すと、深々と頭を下げた。

「どれくらい預かればいいのかね?」

ヴェロニカは答えなかった。
老人が聞き返すことも無かった。
ただ一瞬、何も映さない深い海色の瞳が揺れた。

老人は穏やかに微笑むと、黒猫を撫でる。
「ニカ坊、わしはここで帰りを待っておるよ。こいつもな。」



ゆっくり瞬きをひとつすると、ヴェロニカは背を向け歩き出した。



雪のように白い髪が、夜の闇に解けた。
夢、見たの。

ロシアに帰ったら、ママもパパも
マザーも、セルゲイも
みんな生きてたって夢。

ドッキリだったんだよ、って。

…なんて、酷い。



しっかりしなきゃ。

葉さんも、見つかったみたいだし
きっとすぐ、ぜんぶ元どおりになるわ。

だからもう、掘り起こさないで。
ああ、そうなのね。

ニカ、まだ涙、ちゃんと出るのね…。
永遠に手が届かないって、分かってるヒトを
追いかけ続けるのは、そんなに辛くない。

だってね、サイショから全部ダメなんだって
リカイして、それから追いかけるんだから。

でもね、手が届くかもしれない、可能性がチョットでもあるヒトを
追いかけるのは、とっても辛い。

どこで諦めればいいのか、リカイすればいいのか
わからないんだもの…。


でもね、分からないなら、リカイできないなら

 ……殺してしまえば、良いだけのコト。

  想い出を、自分の感情を、ココロを―――。



   そうすれば、サヨナラは、酷く簡単。
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ヴェロニカ・セヴァスチヤノフ
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